最高裁判所第三小法廷 昭和49年(行ツ)2号 判決 1978年3月28日
上告人 旧商号 ファルベンファブリーケン・バイエル・アクチェンゲゼルシャフト バイエル・アクチェンゲゼルシャフト
右代表者 アルプレヒト・ツァツペルハンス・ローライト
右訴訟代理人弁護士 水田耕一
ローランド・ゾンデルホフ
牧野良三
同弁理士 小田島平吉
伊藤光邦
被上告人 特許庁長官 熊谷善二
右補助参加人 出光興産株式会社
右代表者代表取締役 出光計助
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人水田耕一、同ローランド・ゾンデルホフ、同牧野良三、同小田島平吉の上告理由第一点について
旧特許法(大正一〇年法律第九六号。以下「法」という。)の定める特許出願分割の制度の趣旨にかんがみると、法九条一項の規定により原出願から分割された新たな出願が同項の規定により原出願の時においてこれをしたものとみなされるためには、分割された出願にかかる発明につき、原出願の願書に添付した当初の明細書に、右発明の要旨とする技術的事項のすべてが、その発明の属する技術分野における通常の技術的知識を有する者においてこれを正確に理解し、かつ、容易に実施することができる程度に、記載されている場合でなければならないと解するのが、相当である。右と同趣旨の原審の判断は正当であって、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することはできない。
同第二点ないし第四点について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 天野武一 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己 裁判官 服部高顯 裁判官 環昌一)